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2006年06月10日

Science誌はやぶさ特集号

*Science誌はやぶさ特集号が配達されました!

Science 2 June 2006号は 日本の小惑星探査機はやぶさの特集号です.

表紙は,小惑星イトカワの写真(「ラッコのあたま」を下にしたもの)と"Hayabusa at Asteroid Itokawa"の文字.また,Introduction("The Falcon Has Landed")と,Perspective(解説)1編に加え,堂々の7本の論文が掲載されています.おそらく日本発の研究でScience誌で特集が組まれたのも最初でしょうし,日本人のpaperが7本同時に載るのも最初でしょう.すべて文句の付け所のないオリジナルな仕事です.これは,日本の宇宙科学というよりは,日本の自然科学にとっての快挙といっていいと思います.

ワタシは,おそらくはやぶさ関連のpaperはScienceに載るに違いないとよんで,しっかりと定期購読していたのでした.実際,地学・気象・海洋・宇宙惑星科学の分野はNatureよりScienceの方が得意なように思います.僕の思うに,Scienceはアメリカ科学振興協会(AAAS)という非営利団体の機関誌という側面もあるので,AAAS会員の好みを反映してるせいだと思います.僕の専門の人類遺伝学・発生生物学に関しては,Natureや,僕も定期購読してるNature Genetics(とNature Reviews Genetics)のほうが,当然ながら充実してますね.

さて,内容ですが,肝心のメインの論文はむずかしくってさっぱりわからないので,Perspectiveを読んでいるところです.おもしろいなあと思ったのは,やはぶさミッションの意義のひとつに,小惑星イトカワを含むnear-Earth objects(NEOs)の地球衝突への対処を挙げていることです.おそらく日本では,小惑星が地球に衝突するかもしれないので,それに対して対策をねらなければならないなどと言っても,SFじゃないんだからと一笑に付されそうですが,アメリカはどうやら本気なようです.

実際,破壊するにせよ,軌道をそらさせるにせよ,衝突時の被害をシミュレーションするにせよ,今回のはやぶさの観測結果は決定的な情報を提供しているはずです.そのときは,はやぶさの成果が人類を破滅から救うかもしれないのです.で,僕の想像するに,どうやらアメリカ人は,こういう「全人類を救う」ような仕事はアメリカ人がやるべきだと考えているようです.やっぱり,そういう野心的でスケールのでかい仕事を,極めて小規模な日本のプロジェクトがやってしまったことは少なからずショックのようです.

今回発表された論文の概要は, ISAS/JAXAの特集ページにて,わかりやすく,詳しく説明されています.小惑星イトカワがラッコに見える絵がなんかかわいいです.とにかく一読をおすすめします.

今回のはやぶさのイトカワ着陸に関するニュースには,ワタシが管理人(ほんとに管理だけ)をやっている,JSpace ( http://jspace.misshie.jp/ )という,日本の宇宙関連ニュースの共同英訳プロジェクトをとおして間接的ながら関わりました.アメリカ惑星協会のコーディネータの方からも評価していただいているようです.Scienceの特集を読んだ方もあらたに読みにきてくれているようで,今月はちょっとアクセスが上向きになっています.

はやぶさは,瀕死の重傷でありながら,なんと2台のイオンエンジンの起動試験に成功して,着々と地球帰還の準備をすすめています.まだまだ驚愕のストーリーが続きそうです.でも,(たしか,川口教授が言っていたと思いますが),これ,SFでも,ゲームでも,映画でもなく,我々がやっている現実のプロジェクトなんですよね!

投稿者 hmishima : 2006年06月10日 23:30

コメント

こんにちは。勝手ながらTBさせていただきました。「日本の自然科学にとっての快挙」、まったくそのとおりですよね! こんな大事件を前にしても日本のマスコミは無関心な様子なので、残念です。。。

投稿者 -hiraku- : 2006年06月11日 20:55