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2012年05月30日

NGS現場の会第二回研究会@大阪

*NGS現場の会第二回研究会

NGS現場の会第二会研究会が5月23日~25日に大阪の万博記念公園前のホテル阪急エキスポパークにて開催されました。

去年に引き続き2度目の参加ですが、今年は、会員情報係として、主に参加申し込み関連でスタッフとして参加しました。他のスタッフのみなさんの忙しさが最高潮に達しているとき、ワタシは概ね仕事を終えてすっかりリラックスして大阪に向かったのでした。

では忘れないうちに、感想をつらつらと書いてみたいと思います。

*NGS入門チュートリアル

シークエンサーメーカーによるチュートリアルはいろいろな場で開催されています。その中で、この研究会のチュートリアルの特徴は、ライブラリ調整→シークエンシング→データ解析の流れを、各社がお互いのプレゼンテーションを関連付けながら一体感をもって解説していったことでしょう。プレゼンテーターの中にはスタッフとして運営に参加されていた方もいらっしゃったことも、単なる宣伝ではない面白い雰囲気のチュートリアルだったと思います。

*基調講演

大会長の中村さんのプレゼンテーションがすごかった!!ちなみに、あのプレゼンテーションがすべてPowerPointの機能でつくられているとのことで、それにも驚きでした。さらに畳みかけるように最新データ満載。今後の展開をふくめ分厚い発表でした。

寺内さんの講演は、かなり印象深いものでした。イネの研究があれほど熱いとは!静かな語り口と、静かなオープニングから(じつは期待していなかった)、後半の盛り上がり。すごかったです。

將口さんの講演は、寺内さんの講演を聴いていますから、もうだまされないぞ、と最初から集中して聞かせていただきました。ゲノムを読む、ということの真のおもしろさを知ることができました。

*ポスターセッション

楽しかったです。時間的にはちょうどよかったのではないかと思います。これ以上長いと体力的にちょっときつい。いたるところで、声をはりあげていましたら、おわるころにはかなり汗だくになっておりました。

*懇親会と2次会

懇親会では、もうちょっと初めて会う方と話が出来ればよかったなあと思います。これは運営うんぬんではなくて、個人的なスキルが必要ですよね。少々お酒が入った時点でふらふらしてしまったのが反省点。2次会は、タタミの部屋で行われたのですが、すごい人数と熱気でしたねえ。こんだけのヒトが、飲みながらディープな研究の話をしているのですから壮観でした。ワタシも12時すぎには、もう声が出なくなってしまいました。

*パラレルセッション

これは、全部聞きたかったんですけども、結局パネルディスカッションを聞きに行きました。パネラーの皆さんは既に論客?として知られている方ばかりですので、期待をうらぎらないおもしろさでした。ワタシもちょっと発言してみたりもしました。これについては後述。

*ワールドカフェ

去年に引き続いてことしもワールドカフェが行われました。屋外でなかったのが残念かなと思う一方、マイクやプロジェクターでの進行や、テーブルがある点などを考えると屋内も捨てたもんじゃないと思うんですが、いかがでしょうか?時間は、この微妙にものたりない長さが絶妙かなとおもいます。改善点としては、第一回のような大きな紙のほうが絶対いいはずです。次回は、終わったら容赦なく捨ててしまうことにして、大きな紙にどんどん書き込むのがいいんじゃないでしょうか。話しながらガンガン書いていくのはけっこう楽しいものですよ。

*雑感

ワタシの研究分野は「ヒトの遺伝学」なわけですが、正直に言ってちょっとこの分野に関しては物足りなさが残りました。その理由を考えていたのですが、パネルディスカッションを聞かせていただいて、ちょっとわかったような気がします。

今回のパネルディカッションのテーマは「NGSがコモディティとなった時、成すべきサイエンスは何か」だったわけですが、human geneticsの分野においては、もうNGSはコモディティ=日常的/常識的な技術になってしまっているのではないでしょうか。実際、現在のhuman geneticsの研究でエクソーム解析を考慮しないプロジェクトはあり得ませんし、試薬もシークエンサーもプロトコールも解析ワークフローも成熟の域に達しています。コストも(特に受託解析で)急激に下がっています。もちろん、実際にやってみなければわからないようなノウハウはたくさんあるのですが、今や正しい研究デザインで正しく解析すれば、必ず結果(エクソン内の変異に起因する単一遺伝子病の原因遺伝子の発見)にたどりつくことは明白です。とすると、もう、学会で情報収集するような段階ではない、ということになるのでしょう。

ただ、今の方法でのgene huntingで「狩りつくす」時が来ます。必然的に多因子遺伝病や、プロモーター、UTR、miRNAなどなど、できればやりたくなかった領域を相手に格闘しなくてはならない時がきます。その時を 見据えて、なんでも吸収してやるとの意気込みで来年も参加したいと思っています。

それと、解析ワークフローがコモディティなら、それを隠す意味もないということになります。この辺は、オープンソースとしての公開もふくめて推し進めていきたいなと思っています。

*最後に

出席者約450名。(ワタシ以外の)スタッフのみなさんのがんばりと消耗はかなりのレベルに達していたと思います。この苦労と引き替えに、参加者全員に、確かにここには熱いコミュニティーが存在する!という共通認識ができたんではないかと思います。これは、今の日本のサイエンスにとって小さくない事件だと思うのです。

投稿者 hmishima : 2012年05月30日 22:30